経営法務⑥ 〜民法、その他基礎知識〜
直接出題されなくても法務の基本的用語は他でも出てくるので、最低限の言葉は覚える必要がある。
[民法]
民法に関する基礎知識
・民法の原則
①所有権絶対の原則
③過失責任の原則 ー 故意(わざと)・過失(不注意)がなければ損害を賠償しなくてもよいという原則
・代理
①無権代理 ー 代理権のない者が代理人として勝手に代理行為をすること。本人が後になって認めたら有効
②表見代理 ー 無権代理行為でありながら、本人と代理人との一定の関係から、有権代理と同じように代理行為の効果が本人に帰属するもの
・条件
法律行為の効力の発生または消滅を将来の成否不確定な事実にかからせること
・期限
法律行為の効力の発生や消滅または法律行為から生じる債務の履行期を、将来到来することが確実な事実にかからせること
・期限の利益
月末支払いのとき、月末までの代金を支払わなくていいといった猶予は利益。支払い遅延などの場合はこれが喪失するというような条件をつけることができる
債権・契約
・債権の種類
①特定物債権 ー 不動産。「このパソコン」「あの自動車」など
②種類債権 ー 「ジュース1ダース」など。不特定物債権
③利息債権 ー 利息の支払いを目的とする債権。
民法(AさんBさん)の法定利率は年5%。商行為(A社B社)による法定利率は年6%
・契約の種類
①典型契約(有名契約)と非典型契約(無名契約) ー 民法の規定のある典型的な13種類の契約とそれ以外
②双務契約と片務契約 ー 契約の各当事者が互いに対価的意味を有する債務を負担する契約と当事者一方のみに債務が生じる契約(贈与・使用貸借・無償委任など)
③要物契約と諾成契約 ー 契約の成立のために物の引渡しが必要となる契約と当事者間の合意だけで成立する契約。要物契約は消費貸借・使用貸借・寄託のみ
④要式契約と不要式契約 ー 契約の成立に一定の方式を要する契約(保証契約、婚姻など)と方式を不要とする契約(ほとんどの財産上の契約がこれ)
・典型契約
[財産の利用を目的とする契約]
①消費貸借 ー 種類、品質、数量の同じ物を返す。お金の貸し借りが主。無償だが利子がついてれば有償になる
②使用貸借 ー 無償で借りてその物を返す
③賃貸借 ー 借りた人は賃料を払う
[役務や労働力の利用を目的とする契約]
①請負 ー 請負人がある仕事を完成することを約し、その結果に対して報酬を支払う
②委任 ー 法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって生じる契約。善管注意義務あり(最善を尽くすこと)
③寄託 ー 保管することを約して、ある物を受け取ることによって効力が生じる契約
契約の履行
・保証
①保証契約 ー 主債務者が債務を履行しない場合に、保証人がその履行を担保する制度。債権者と保証人との契約。書面でされない限り無効
②連帯保証 ー 1、補充性がない(催告の抗弁権および検索の抗弁権がない)。抗弁権=拒絶すること。主務者に請求すべき、財産あるから探してみるべきと言えないということ
2、分別の利益がない(複数の保証人がいる場合、平等に分割すればいいが全額請求される)
・契約の不履行
①履行遅滞 ー 履行可能にもかかわらず、故意・過失によって履行しないこと
②履行不能 ー 当初は可能であったが、その後不能になること。契約の解除は催告不要、金銭債務は不能にならず遅滞(世の中からお金がなくなることはあり得ないから)
③不完全履行 ー 履行はあったがそれが不完全であった場合のこと。納品物が壊れてたなど
・債権者代位権 ー 債務者Bが土地を購入したがその土地の所有権移転登記をせずに放置してる場合、債権者Aが債務者Bに代わってその土地の売主に対して所有権移転登記を請求することができる
・詐害行為取消権 ー 債務者が債権者を害することを知ってした法律行為について、債権者が裁判所に取消を請求できる権利
・危険負担 ー たとえばA(債務者)がB(債権者)に家を売る売買契約をしていたとする。しかし、引渡し前にAの責任外で家が消失した場合など、目的物の引渡しが不可能となったときは、A・Bどちらが危険を負担しなければならないかという問題。民法では原則、債務者主義(債務者が負担する考え方)。ただし、特定物(不動産など)は債権者主義になるので、この場合はBがお金を払うになる。
※債務者の故意・過失があれば債務不履行、なければ危険負担
・瑕疵担保責任 ー 売買契約など有償契約において、目的物に隠れた傷(瑕疵)があった場合、売主が買主に対して負う損害賠償をする責任、契約解除に応ずべき責任のこと。責任の存続期間は買主が知った時から1年。債務者(売主)は無過失責任
・不法行為 ー 故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害し、これによって損害を与え利益侵害行為。時効は損害を知った時から3年
・不当利得 ー 法律上の原因がないのに(正当な理由がないのに)他人の財産または労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)に対して、その利益を返還する義務を負わせる制度。おつりをもらい過ぎたなど。「善意の受益者」は現存する限度で返還義務を負う。10万円のワインを買ったら100万円のが届いたけど知らないで飲んでしまったら残ってる分を返せばいい。無過失責任で時効は債務不履行と同じ10年
物権
物を直接的に排他的に支配できる権利
・発生時期は、当事者の意思表示のみによって効力を生じる
・対抗要件を備えない限り、その変動を第三者に主張できない。不動産であれば登記、動産であれば引渡し(占有の移転のこと)
・物権の種類
①所有権 ー 自由にその所有物の使用、収益および処分をすることができる権利
②担保物権 ー 一定の物を債権の担保に差し出すことを目的とする物件
→約定担保物件
1、質権 ー 債権者がその債権の担保として債務者または第三者から受け取った物を占有し、かつその物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることができる権利。100万円を貸す代わりに自動車を預かった場合、お金を返せなかった時に、預かっていた自動車を売ってお金を回収する
2、抵当権 ー 債権者が、債務者または第三者が占有を移転しないで債務の担保に差し出した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることができる権利。家を担保にお金を貸す場合など
相続
・相続は被相続人の死亡によってのみ始まる
・放棄(マイナス財産の方が多い時など)は知った時から3ヶ月以内に手続必要
・遺留分 ー 遺言があっても相続人には最低限の相続財産が保証されること。配偶者と直係(子、孫、親、祖父母など)のみで兄弟姉妹はなし。
・遺留分減殺請求権 ー 遺留分権利者(および承継人)のうち遺留分を侵害された者が、贈与または遺贈(遺言による贈与のこと)を受けた者に対し、遺留分侵害の限度で財産を取り戻すことを請求できる権利。贈与または遺贈のあったことを知った時から1年以内に請求しないと時効によって消滅する
・遺留分特例(経営承継法) ー 経営承継法に基づき、非上場中小企業の後継者は、遺留分権利者全員との合意および所要の手続を経ることを前提に、以下の民法の特例の適用を受けることができる(併用可)
1、生前贈与株式を遺留分の対象から除外(除外合意)
遺留分を算定するための財産の価額に参入しない
2、生前贈与株式の評価額をあらかじめ固定(固定合意)
参入すべき価額を合意の時における価額にできる
※ただし後継者が所有する株式のうち、合意の対象とした株式を除いたものに係る議決権の数が総株主の議決権の50%以下の数のときが有効
結構細い論点が多いが、出ない時は全然出ないし平均しても3問くらいか。
出なかったら無駄だな〜と思うとやる気を失うので、知ってて役に立つことは多いから、試験に関係ないモチベーションで覚えよう!